弁護士には守秘義務があるため、東京弁護士会のガイドラインでも、秘匿性の高い情報をAIに入力する場合の注意が示されているようです。同会の会報LIBRAの生成AI特集(2026年7・8月合併号)では、個人名などを仮名(かめい)に置き換えてからAIに渡す「仮名化(かめいか)」に触れ、Wordの置換機能で地道に仮名にする方法も紹介されています。
ただ、この方法には手間がかかります。名前ごとに置換を繰り返し、AIの回答を受けた後も、同じく名前ごとに逆に置換して実名に戻すことになります。AIを使うたびに、仮名化の分だけ手間が増えることになります。
過去の書面は、AIに生かせない
書面を作るときに、似た事件の準備書面をひな形にしたり、パソコンの中を検索して以前の主張を探したりする弁護士の方もいると思います。
しかし、それができるのは、「あの事件で同じような主張をした」と思い出せた場合に限られるでしょう。思い出せなければ、過去の書面は、フォルダの中で眠ったままです。
AIは、大量の文書を読んで、必要な箇所を見つけ出すのが得意です。ところが、過去の書面は実名で書かれているはずです。これでは、過去の書面をAIに生かしてもらうことはできません。
これに対し、仮名化した書面は、事件が終わった後も、AIに読ませることのできる資料として残ります。書面を1つ仕上げるたびに、AIが読める資産が1つ増えていくのです。
散らばっていては、資産にならない
ただし、仮名化した書面があっても、あちこちのフォルダに散らばっていては、資産になりません。どの書面がどこにあるかが分からないからです。事件ごとにフォルダを分けているとしても、そこには訴状・証拠・依頼者とのやり取りなど、実名のファイルも一緒に入ってしまっています。実名のファイルがあるかもしれないフォルダを、AIに検索させるのは問題と考えられているようです。
このため、仮名化した書面は、実名のファイルとは分けて、すべての事件のものを1つのフォルダに集めておく必要があります。ファイル名にも、依頼者の名前や事件名を入れないようにします。そうすれば、仮名化した書面のデータベースができあがります。
そのデータベースから関係する書面を探すときには、AIが使えます。そのフォルダには実名のファイルがないので、AIにフォルダごと読ませても問題ありません。たとえば、Claude Codeの作業フォルダをそのフォルダにして、「賃料の不払いを理由に建物の賃貸借契約を解除した事件の書面はどれか」と尋ねれば、AIが書面を読んで、関係するものを挙げてくれます。
仮名化は投資である
AIを使うための仮名化は、効率を下げるように見えます。しかし、仮名化した書面は、事件が終わった後も、AIが読める資産として残ります。仮名化の手間は、その書面のためだけに払うものではなく、将来の書面を効率良く作成するための投資でもあります。
とはいえ、書面を作るたびに仮名化し、それを実名のファイルと分けて1か所に集めるのは、手間がかかります。VA Documentは、その手間を減らすためのツールです。


コメント
「仮名化」に読み仮名を付けました。