人は皆、コードを書きながら生きている

コラム

きっかけは、あるセミナーへの参加でした

2026年7月4日、「ノンプログラマーズ・テクノロジーキャンプ2026」というAI・DX活用セミナーに参加しました。AIで何かを始めたい人たちが集まり、互いの取り組みを共有する場でした。そこで発表された活用事例の中に、Claude Codeに関するものがありました。

それを聞いて、私の中に一つの考えが固まりました。それは、プログラマーであるかどうかを問わず、人は皆、コードを書きながら生きているのではないか、ということです。

奇妙に聞こえるかもしれません。私自身、元陸上自衛隊の航空整備幹部であり、日々の仕事は防衛関連の記事執筆、翻訳です。ソフトウェア・エンジニアではありません。それでも、この結論に至った理由を、以下に記します。

プロンプトは、業務のやり方そのものです

Claude Codeでは、「Code」という言葉が指すものは、プログラムのコードだけではありません。プロンプトもまた、CLAUDE.mdのようなファイルやスキル、カスタムコマンドとして、コードと同じようにファイルに保存され、Gitで版管理されます。この仕組みはClaude Codeに限った話ではなく、Cursor、Cline、Windsurf、Antigravityなど、この種のAIコーディングエージェントに共通するものです。

プロンプトとは、業務のやり方の言語化にほかなりません。「この一次資料をこう読み解け」「この記事をこう構成せよ」「この英文をこう訳せ」。私が日々の仕事の中で暗黙のうちに従っている手順や判断基準を、言葉にしたものがプロンプトです。

そして、人は誰しも、仕事を通じてそのやり方を学び続けています。私の場合も、この仕事をはじめたばかりのころのやり方と、十年経った今のやり方は違います。似たような業務を繰り返しながら、失敗を重ね、フィードバックを受け、少しずつ手順を洗練させてきました。これは、プロンプトを書き換え続ける作業と、本質的に同じ構造を持っています。

二つの図が示す違い

この考えを整理するために、一枚の対比図を描いてみました。

左側は、通常のClaudeによる業務を表しています。中心に固定されたプロンプトがあり、その周りを入力・処理・出力が円環を描いて回ります。出力から入力へは点線で戻りますが、この戻りはプロンプトには書き戻されません。何度繰り返しても、同じ円を回り続けるだけです。

右側は、Claude Codeをはじめとする、この種のAIコーディングエージェントによる業務を表しています。中心には「プロンプトの成長」を示す矢印が上へ伸び、その周りを入力・処理・出力・フィードバックが螺旋状に回ります。一周するごとに、フィードバックが次の周回のプロンプトに書き戻され、螺旋は一段ずつ上へ上がっていきます。

通常のClaudeとの対話の中でも、プロンプトを工夫し改善すること自体は可能ですが、それを残すためには、手動でプロンプトを書き換えなければなりません。違いは、その改善がセッションを越えて蓄積され、ファイルとして資産化される仕組みを持つかどうかにあります。Claude Codeをはじめとする、この種のAIコーディングエージェントでは、今日改善した手順が、明日の自分にそのまま引き継がれます。

これは、目新しい話ではありません

一周ごとに一段高いところへ戻る螺旋的な成長というモデルは、実は目新しいものではありません。同じ構造を持つモデルは、経験学習を提唱したコルブのサイクル(経験→省察→概念化→試行)や、野中郁次郎氏らの知識創造理論におけるSECIモデルでも提唱されているようです。

私が現役の航空整備幹部だったころ、部隊で日常的に行っていたAAR(事後検討会)もまた、この螺旋そのものでした。任務を遂行し、結果を検討し、任務のやり方に反映する。この繰り返しによって、部隊の練度は少しずつ、しかし確実に向上していきます。

Claude Codeをはじめとする、この種のAIコーディングエージェントがもたらすのは、この「任務のやり方」を、プロンプトという具体的な形で、ファイルとして保存し、育て続けられるようにする仕組みです。

人は皆、コードを書きながら生きている

Claude Codeの「Code」が、プログラムのコードだけでなく、業務の手順そのものを含んだ概念だとすれば、VBAでツールを作る人も、記事を書く人も、翻訳をする人も、日々の業務の中で「やり方」を少しずつ書き換えてゆくという営みは、Claude Codeが行うものと同じものだということになります。頭の中だけで完結していたやり方が、Claude Codeという道具を得たことで、目に見える形の「プロンプト」として書き出せるようになった、ということです。

プログラマーであるかどうかは関係ありません。人は皆、経験を通じて自分なりの手順を書き、検証し、書き直しながら生きています。人は皆、コードを書きながら生きているのです。

コメント

  1. ichihuku より:

    「プロンプトは業務のやり方そのもの」目からうろこでした。そう考えると、AIが、”苦手な新しいこと”、から”長年の経験で積み上げてきたよくわかっていること”に変わりますね。そうやってAIと仲良くなっていけばいいのかなあと思いました。
    そして、先日はお会いできて良かったです!

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