法律事務所では、一太郎を使っている人が多いですね。
ワードは、「インデントの設定が難しい」って言う人が多いみたいです。
それでは、VBAを使って、裁判所提出書類用のアウトラインやスタイル、インデントなどの書式を簡単に設定できるアドインを作ってみましょう。
インデントさえ簡単に設定できるようになれば、一太郎からワードに乗り換える人が増えるかも知れませんね。
このアドインは、書式の設定だけではなく、マークダウン↔アウトライン変換機能も備えています。
マークダウンって何ですか?
簡単に言うと、各段落の先頭に入力された「#」マークの数で、見出しのレベルを表す文章の表記法です。マークダウンにはほかにもいろいろな機能があるのですが、このマクロでは見出しとリストの機能だけを使っています。使ってみてもらえれば、その良さが分かると思います。
それは、楽しみですね。
ダウンロード
サンプルファイルは、こちらからダウンロードしてください。
特徴
- 裁判所提出用書類や一般公用文などの書式に合わせたページ設定が行なえます。
(各行の文字送りが揃うように右余白を自動調節します。) - ページ番号や行番号も設定できます。
(ページ番号を右上に配置した場合は、最終ページに”」”(カギカッコ)が付きます。) - サンプルを表示させることで、スタイルの確認ができます。
- スタイルやアウトライン機能を使って見出しを設定できます。
- マークダウン⇔アウトラインの変換ができます。
- 見出しや本文のインデントが自動的に設定されます。
- セクション区切りで見出し番号の振り直しができます。
- マクロの定数を変更することでカスタマイズができます。
使い方
準備
ダウンロードしたファイルを「スタートアップフォルダ」に保存すれば、アドインとして、いつでもマクロを利用できるようになります。(他の使い方もできますが、この方法を推奨します。)
セットアップ
Ctrl+Shift+Mまたはクイックアクセスツールバーのホーム・マークをクリックすると、セットアップのフォームが表示されます。
作成する文書の種類などを選択して「OK」ボタンをクリックすると、選択した文書の種類に応じて現在表示されているドキュメントのページ設定、スタイルなどを設定できます。
「ヘルプ」ボタンをクリックすると、簡単な説明が表示されます。
「サンプルを追加」のオプションをオンにして、セットアップを実行した後、操作方法にしたがってマクロの動作を確認してください。
マクロの操作はショートカットキーで行うのを基本にしていますが、一部の操作はクイックアクセスツールバーまたは右クリックメニューでも行なえます。
インデント解除⇔インデント設定
アウトラインが設定されている状態で、Ctrl+Shift+Lまたはクイックアクセスツールバーの四角印を押すとインデントが解除されます。
Ctrl+Shift+>またはクイックアクセスツールバーの右矢印を押すとインデントが設定されます。
セクション区切りがある場合は、見出し番号の振り直しも行われます。
マークダウン⇔アウトライン変換
Ctrl+Shift+<またはクイックアクセスツールバーの左矢印を押すとマークダウンに変換されます。インデントは自動的に解除されます。
Ctrl+Shift+>またはクイックアクセスツールバーの右矢印を押すと、アウトラインに変換されます。インデントも自動的に設定されます。
マクロの対象となる段落
マクロによる自動調整が行われるのは、「見出し」、「標準」および「リスト段落」スタイルだけです。これ以外のスタイルが適用された段落には、自動調整が行われません。
表などの自動修正を行いたくない段落には、「行間詰め」スタイルを適用してください。
最初の見出しまではマクロの対象外になっています。頭書の部分の書式(段落の中央揃えなど)は「標準」スタイルのままでも自動修正が行われません。(マクロの定数を変更することで、対象に含めることもできます。)
行頭に全角の「空白」があるとマクロが停止するようになっています。文末の補足の書式(段落の中央揃えなど)も、空白がある行より下に記載すれば、「標準」スタイルのままでも自動修正されません。(マクロの定数を変更することで、停止しないようにすることもできます。)
制限事項
Mac用ワードでの使用には、次の制限があります。
- マクロの定数を「VBA停止を許可する」に設定している場合、VBAが処理の途中で停止する場合があります。
- ショートカットキーおよびクイックアクセスツールバーの再設定が必要です。
- 右クリックメニューは、使用できません。
- ステータスバーに進捗状況が表示されません。
- マウスポインタがウエイト表示になりません。
別のテンプレートを併用した場合、アウトラインの設定はそのテンプレートの設定が優先します。
(このマクロを使ってセットアップしたテンプレートを使うことを推奨します。)
見出しに設定された段落が1つもない状態でセットアップを行った場合は、インデントの設定などの操作を行うまで見出しが正常に表示されません。
セクション区切りに応じた見出し番号の振り直しは、インデント設定時に行われます。アウトライン設定時やインデント解除時には振り直しが解除されます。
その他
文書の種類ごとのページ設定、アウトライン、スタイルなどの細部設定値は、定数を変更することによりカスタマイズできるようになっています。
細部は、「マクロのカスタマイズ」の項を参照してください。
ショートカットの割当を変更したい場合は、こちらの記事をご参照ください。
クイックアクセスツールバーの設定を変更したい場合は、こちらの記事をご参照ください。(リボンへの登録方法も紹介されています。)
このマクロを使わずに作成されば文書も、標準的な手法でスタイルなどが設定されていれば、自動設定が可能です。標準的な手法によらない文書を読み込みたい場合は、「VAマークダウン」を使って一旦マークダウンに変換してください。
見出しをゴシック体にしたり、次の段落と分離しないように設定したい場合は、「VAスタイル」を使用してください。
内容証明郵便については、別に紹介している「VA内容証明郵便」を併用して、字数および行数をチェックすることをおすすめします。
マクロの概要
このマクロは、自由に閲覧・編集できる状態になっています。
ファイルをエクスプローラーで右クリックして、「開く」を選択すると、アドイン・ファイル自体を編集できるようになります。その状態から、「開発」-「Visual Basic」をクリックするとマクロのエディターが起動します。
マクロの特徴
このマクロのポイントは、「スタイルやアウトラインではインデントを設定しない」という点にあります。
インデントを手作業で設定する場合にはスタイルやアウトラインで設定した方が便利ですが、マクロで設定する場合にはかえって邪魔になります。
このため、このマクロでは、スタイルやアウトラインではインデントを設定せず、段落ですべてのインデントを設定しています。その際には、文字単位の設定だけを使用しています。(スタイルに設定されているインデントは、見出し番号が左余白に入り込むのを防ぐためのもので、段落のインデントでオーバーライドされます。)
見出しのレベルに応じてひとつひとつの段落に異なるインデントを設定するのは大変な作業ですが、マクロならばほとんど一瞬で行えます。
各モジュールおよびプロシージャの機能
フォーム
フォームの中にセットアップ・フォームがあり、セットアップ用オプションの設定に必要なプロシージャが納められています。
標準モジュール
標準モジュールの中に5つのモジュールがあり、それぞれの動作に必要なプロシージャが収められています。
クラスモジュール
クラスモジュールの中に4つのモジュールがあり、それぞれのプロシージャが標準モジュールの各プロシージャから呼び出されます。
クラスモジュール本来の使い方ではありませんが、標準モジュールから呼び出して使うツールボックスとして使用しています。
各プロシージャのコード
各プロシージャのコードについては、サンプルファイルのVBEにコメントで説明していますので、そちらをご確認ください。
マクロのカスタマイズ
「Setting」モジュールには、このマクロの作動に必要な「定数」がまとめられています。この定数を変更することにより、マクロの動作をカスタマイズすることができます。
変更できる項目
- アウトラインおよびインデントの設定値
- ページ設定の設定値
- サンプルの文面
- スタイル、リスト、ページ、マークダウン記号、マクロ動作の各設定値
変更履歴
このマクロの変更履歴は、「ThisDocument」モジュールに記載しています。
参考文献
書式については、次の資料を参考にしています。
- 裁判文書(裁判所提出書類)の標準的な書式 実務の友
- 内容証明 ご利用の条件等 日本郵便(株)
- 分かりやすい公用文の書き方(第2次改訂版) 礒崎 陽輔 (著)
- 契約書フォーマット 経済産業省
- 契約書の達人 小山内行政書士事務所
マークダウンからの変換については、こちらの記事を参考にしました。
素晴らしいアイデアを公開していただいたstabucky.com様に感謝申し上げます。
関連記事
どうでしょう。一太郎以上に簡単にインデントを設定できると思います。
マークダウンで文書を起案するようにすれば、スタイルなどを気にせずに文書の起案に集中できそうです。
ワードよりも動作の軽いエディターでスピーディーに入力を行い、コピー&ペーストでこのテンプレートに流し込むという方法もあります。
コメント
ナビゲーションウィンドウを使って、見出しを含む文書内の要素の順番を入れ替えようとすると、最後の「補足」の部分が最後の見出しと一緒に動いてしまいます。補足との区切りを「全角の空白」にしているためです。アウトラインのレベル9を「番号なし」にして、これを区切り文字に使うという方法もあるのですが、できれば「(i)」の見出しを残したいです。何か良いアイデアがあれば、教えて下さい。
はじめまして、この記事とWordファイルに感激しました。
影本さまはセミナーなどやっていますでしょうか?
「分かりやすい公用文の書き方 第2次改訂版」のルールに沿ったワードマークダウンが必要となっています。
影本様にココナラなどで委託することはできますでしょうか?
コメントありがとうございます。
このテンプレートは、自分でも「イケてるんじゃないか?」と思っていましたので、このようなコメントを頂けて、こちらも感激しています。
頂いたご質問への回答は、次のとおりです。
・セミナーは、行っていません。(それほどの能力はないと思っています。)
・業務の委託は引き受けておりません。(本サイトへの協賛金は受け付けております。)
・このテンプレートは、私の勤務する法律事務所のニーズに合わせたものであり、「分かりやすい公用文の書き方 第2次改訂版」のルールは確認していません。今後、対応について検討させていただきたいと思います。
「分かりやすい公用文の書き方 第2次改訂版」のルールに合わせられるようにしました。
「箇条書き」および「段落番号」に対応させました。
定数を変更することで裁判所提出書類用から一般公文書用に変更するなどのカスタマイズができるようにしました。(Ver200)
ゴシック体への変換機能を追加しました。
クイックアクセスツールバーでの操作を可能にしました。
右クリックでの操作を追加しました。
その他細部バグを修正しました。(Ver320)
「箇条書き」および「段落番号」は、その都度、最初から設定しなおしています。どんな文章でも必ず1つの段落があるので、よほどのことをしない限り「アウトライン」は設定が残るのですが、「箇条書き」や「段落番号」は消えてしまう可能性が高いからです。
アウトラインのレベル8と9に「箇条書き」と「段落番号」を割り当てる方法もあるのですが、私の経験では、iや(i)の見出しを使う場合もなくはなかったので残したいです。
ListGal.datをテンプレートと一緒に配布する手もあるのですが、それも面倒です。
何か良いアイデアがあれば、教えて下さい。
契約書に対応させました。
全角の見出し番号が2桁および3桁になる場合のインデント自動修正機能を追加しました。
Mac用ワードでのエラーに対応させました。
その他、細部バグを修正しました。(Ver441)
Vectorにも掲載されました。
https://www.vector.co.jp/soft/data/writing/se525564.html
マークダウンとアウトラインとの変換の中間状態としてニュートラル(ベタ打ち)を追加しました。
セットアップ時に文書の種類を選択するフォームを追加しました。
内容証明郵便に対応しました。
サンプル追加機能を追加しました。
ページ番号の設定機能を追加しました。
ヘルプ表示機能を追加しました。(Ver545)
セットアップの初期値を自動的にテンプレートに保存できるようにしました。(Ver551)
「For Next」に代えて、「For Each」を使うことで処理速度の改善を図りました。(Ver582)
インデントやアウトライン設定の処理速度が約3倍になっています(箇条書きや段落番号を使用していない場合)。
今回の改修は、ノンプロ研(https://nonproken.shop/)の「VBA研究会」での研究成果に基づくものです。
変数の宣言に漏れがありましたので、修正しました(Ver583)
表の中でも右クリックメニューを使えるようにしました。(Ver584)
ただし、表の中では「行間詰め」スタイルを使って、インデントの自動設定が行われないようにすることを基本にしています。
使い方の概要を表したスライドを追加しました。
新規に作成した文書などの見出しが設定されていない文書でも、アウトラインの設定を可能にしました。(Ver593)
別に紹介している「VAマークダウン」で、書式がカオスな文書を変換した場合にも便利だと思います。
別のテンプレートを利用した場合に2番目以降の見出し番号が表示されないバグを修正しました。(Ver594)
セットアップ時にリスト(箇条書き、段落番号およびアウトライン)の設定を行うようにして、「VA公用文」を使わずに作成した文書への対応を容易にしました。(Ver595)
見出しが1つもない状態でセットアップを行った場合に、インデントの設定などを行ってもアウトラインが設定されないバグを修正しました。(Ver596)
セクション区切りで見出し番号の振り直しを行うようにしました。(Ver602)
現時点ではベータ版としています。
コードのコメントに「セクション」を「セレクション」と書き間違っていたので修正しました。
正式版としました。(Ver603)
ページ右下へのページ番号の入力(総ページ数付)をできるようにしました。(Ver610)